概要 / TL;DR

  • 未病(みびょう)とは「健康と病気のあいだ」──まだ病に至っていない状態
  • 古代インドの『チャラカ・サンヒター』やギリシャのヒポクラテスも同じ発想を持っていた
  • 江戸の貝原益軒『養生訓』も「病を未然に防ぐ」知恵を記録
  • 現代では生活習慣病予防や健康寿命延伸の考えと重なる
  • 未病は人類共通のテーマであり、日常で実践できる智慧である

西洋の視点

ヒポクラテスと自然治癒力

古代ギリシャの医師ヒポクラテスは「病気と健康のあいだ」にある微妙なバランスを意識しました。

「食事で治せない病は、医師でも治せない。」

この言葉に象徴されるように、彼は人間本来の自然治癒力(physis)を尊重し、食事・生活習慣による予防を重視しました。これは未病概念を別の言葉で示したものといえます。

東洋の視点

アーユルヴェーダに見る未病の原点

古代インドのアーユルヴェーダ医学では、病気が芽生える前の段階を整えることが重視されました。『チャラカ・サンヒター(Charaka Saṃhitā)』には次のような言葉が残されています。

「病は芽生える前に整えよ。芽が伸びれば刈り取るは難しい。」

食事・睡眠・行動・感情の乱れを早めに調整する──これが未病思想の原点です。

江戸の養生訓と日本の未病観

江戸時代の貝原益軒『養生訓』は、まさに未病を体現する知恵の宝庫です。

  • 春の若菜を食して気をめぐらせる
  • 腹八分目にとどめて長寿を得る
  • 怒りや欲望を鎮め、心を静める

益軒は「病気になる前に心身を整えること」を養生の核心とし、これは「治未病(未だ病を治す)」の精神と一致します。

実践ガイド

現代科学から見た未病

  • 生活習慣病予防:血圧・血糖・体重の軽度異常は“未病のサイン”
  • 公衆衛生:健康寿命を延ばすには発症前からの改善が必要
  • 精神医学:ストレスや不眠なども“病気未満”としてケア対象に

例えば「腹八分目」は肥満・糖尿病・心疾患リスクの低下と関連することが科学的に示されています。

セルフチェック|未病のサイン

3つ以上当てはまれば、生活習慣の見直しや医師相談をおすすめします。

  • 朝起きても疲れが取れない
  • 肩こりや冷えを感じやすい
  • 眠りが浅く夜中に目が覚める
  • 胃腸の不調が多い
  • イライラ・不安感が続いている
  • 季節の変化で体調を崩しやすい

まとめ

  • 未病とは健康と病のあいだにある「気づける状態」
  • 病を防ぐために「変えられるタイミング」
  • 古代インド、ギリシャ、江戸時代の知恵が現代科学と響き合うテーマ

Ausadhihは、古今東西の智慧と現代研究をつなぎ、日常で実践できる未病ケアを発信していきます。

西洋的視点で解説するバランス博士のキャラクターアイコン

バランス博士:「生活習慣病予防」という現代の課題も、実は古代からの未病思想とつながっているんです。

東洋的解説をするどうげん師範のキャラクターアイコン

どうげん師範:芽を摘むように、心身の乱れを早めに整える──これが養生の極意ですな。


参考文献

  • 『チャラカ・サンヒター』英訳版(Sharma, 1992)
  • Hippocrates, Aphorisms
  • 貝原益軒『養生訓』国立国会図書館デジタルコレクション
  • 厚生労働省「未病と生活習慣病予防」資料