PDCAAS・DIAASとは?|たんぱく質の「質」は何を測っているのか
同じ10gのたんぱく質でも、食品によって「質」が違う。この説明に使われるのが、PDCAAS(ピー・ディー・キャース)とDIAAS(ディアース)です。
ところが、DIAASが60なら「60%しか吸収されない」、120なら「120%吸収される」と解釈すると、指標の意味から外れてしまいます。PDCAASとDIAASは、単純な吸収率でも、筋肉へ変わる割合でもありません。
評価しているのは、食品たんぱく質1gに含まれる必須アミノ酸が、消化性を考慮したうえで、人の必要量をどれほど満たせるかです。したがって、数値を読むには、アミノ酸の構成、消化率、比較に使う年齢別の基準パターンを分けて理解する必要があります。
この記事の要点
- PDCAASとDIAASは、たんぱく質の吸収率そのものではない
- どちらも、必須アミノ酸の構成を人の必要量と比較する
- PDCAASは、たんぱく質全体の糞便消化率でアミノ酸スコアを補正する
- DIAASは、小腸末端までに消化された必須アミノ酸を一種類ずつ評価する
- 数値は、食品の種類、加工、測定法、対象年齢によって変わる
- 食品のスコアだけを平均しても、混合食のスコアは計算できない
- DIAASの計算にはアミノ酸別の回腸消化率が必要で、利用できるデータには限りがある
たんぱく質の「質」とは何か
人の身体を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類は必要量を十分に合成できず、食事から摂る必要があります。これらが必須アミノ酸、または不可欠アミノ酸です。
食品中のたんぱく質は、必須アミノ酸の含有割合がそれぞれ異なります。人が必要とするアミノ酸の基準パターンと比べ、最も割合の低いものを第一制限アミノ酸と呼びます。
たとえば、多くの穀類ではリシンが相対的に少なく、多くの豆類ではメチオニンとシステインを合わせた含硫アミノ酸が相対的に少ない傾向があります。必要なアミノ酸のうち一つが不足すれば、ほかのアミノ酸が十分にあっても、身体のたんぱく質合成へ同じようには利用できません。
ただし、食品に含まれる量だけでは、身体へ届く量は分かりません。消化されずに排出される分や、食品の構造、加工による違いもあります。そこで、必須アミノ酸の構成に消化性を組み合わせて評価する方法が必要になります。
たんぱく質の評価は、なぜ変わってきたのか
たんぱく質の質を測る方法には、動物の成長をみるPER(たんぱく質効率比)、摂取した窒素が身体へどれだけ保持されたかをみる生物価や正味たんぱく質利用率、アミノ酸の構成を比較する化学的なスコアなど、複数の歴史があります。
1989年に開かれたFAO/WHOの専門家会合は、アミノ酸スコアをたんぱく質全体の消化率で補正するPDCAASを推奨しました。報告書は1991年に公表され、その後、PDCAASは食品や原料のたんぱく質品質を評価する代表的な方法の一つとして広く用いられてきました。
一方、PDCAASには、消化管の終点に近い糞便でたんぱく質全体の消化率を測ること、アミノ酸ごとの消化率の違いが見えないこと、100を超える値を切り捨てることなどの課題がありました。
FAOは2011年の専門家会合を経て、2013年の報告書でDIAASをPDCAASに代わる新しい評価法として提案しました。DIAASは、小腸末端である回腸までに消化された必須アミノ酸を、アミノ酸ごとに評価します。
ただし、提案されたことと、世界の制度や食品表示が一斉に置き換わったことは同じではありません。人で測定された回腸消化率のデータはまだ限られており、FAOとIAEAはデータベース整備や測定法の研究を続けています。PDCAASは現在も、規格や研究の目的によって使われています。
PDCAASとは|アミノ酸スコアを糞便消化率で補正する
PDCAASは、Protein Digestibility-Corrected Amino Acid Scoreの略で、日本語では「たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア」などと訳されます。
まず、食品たんぱく質1gに含まれる各必須アミノ酸の量を、基準となるアミノ酸パターンと比較します。その中で最も低い比率がアミノ酸スコアです。次に、その値へ、たんぱく質全体の真の糞便消化率を掛けます。
PDCAAS = 第一制限アミノ酸のスコア × たんぱく質全体の真の糞便消化率
スコアを0〜1で表す場合も、0〜100で表す場合もあります。PDCAASでは通常、計算値が1.0または100を超えても、その値で打ち切ります。
PDCAASが1.0だからといって、食べたたんぱく質が100%吸収されるという意味ではありません。比較に使った基準パターンに対し、糞便消化率で補正した第一制限アミノ酸が不足していない、という意味です。
PDCAASの長所
- 必須アミノ酸の構成と消化性を一つの指標へまとめられる
- 計算方法が比較的単純で、蓄積されたデータが多い
- 人のアミノ酸必要量を基準にしている
PDCAASの限界
- 糞便で評価する:大腸の腸内細菌は窒素やアミノ酸を利用・産生するため、糞便に残った量は小腸で吸収された量をそのまま表さない
- たんぱく質全体へ一つの消化率を使う:リシンとメチオニンなど、アミノ酸ごとの消化率の違いが反映されない
- 100で打ち切る:基準を超えて含まれるアミノ酸が、別の低い食品を補完できる可能性を数値上で区別できない
- 加工の影響を捉えきれないことがある:加熱や保存で特定のアミノ酸の利用性が低下しても、総窒素の消化率だけでは見えにくい
DIAASとは|必須アミノ酸を回腸で一つずつ評価する
DIAASは、Digestible Indispensable Amino Acid Scoreの略で、日本語では「消化性不可欠アミノ酸スコア」などと訳されます。
食べ物のアミノ酸は、主に小腸で吸収されます。小腸の末端である回腸を通過した後は、大腸の細菌による代謝が加わります。そのため、身体へ届く食事由来アミノ酸を評価するには、糞便よりも回腸までの消化性を見る方が理論的に適しています。
DIAASでは、食品たんぱく質1gに含まれる各必須アミノ酸について、それぞれの回腸消化率を掛け、消化されたアミノ酸量を求めます。その値を年齢に対応した基準パターンと比較し、最も低い比率を最終スコアとします。
各アミノ酸の比率 = 消化された必須アミノ酸量(mg/gたんぱく質)÷ 基準パターンの同じアミノ酸量(mg/gたんぱく質)× 100
DIAAS = 各必須アミノ酸の比率のうち、最も低い値
単一の食品たんぱく質を補完源として評価するとき、DIAASは100を超える値も保持します。100を超えることは、100%を超えて吸収されるという意味ではなく、基準パターンより多くの消化可能な必須アミノ酸を含み、別の食品の不足を補える余地があることを示します。
一方、食事全体や唯一のたんぱく質源として実際の摂取量を評価する場合には、FAOは100を超える部分をそのまま過大に加算しない計算を示しています。用途によって、スコアの扱いが異なります。
DIAASの長所
- 吸収が行われる小腸末端までの消化性を使う
- 必須アミノ酸ごとの消化率を反映できる
- 100を超える食品の補完能力を区別できる
- 食品、原料、混合食をアミノ酸単位で検討できる
DIAASの限界
- 測定が難しい:健康な人の回腸内容物を直接採取することは容易ではない
- 人のデータが少ない:ブタなどの動物データや、異なる測定法から推定した値も含まれる
- 食品条件が揃わない:品種、加熱、加工、精製度、食品マトリックスによって値が変わる
- 同じ名称でも別物になり得る:大豆そのもの、大豆粉、大豆濃縮たんぱく、大豆分離たんぱくは同じスコアとは限らない
- 食後の利用をすべて示さない:吸収後の代謝、筋たんぱく質合成、健康への長期影響を直接測る指標ではない
PDCAASとDIAASの違い
| 比較点 | PDCAAS | DIAAS |
|---|---|---|
| 正式名称 | Protein Digestibility-Corrected Amino Acid Score | Digestible Indispensable Amino Acid Score |
| 消化性を見る場所 | 糞便までの消化管全体 | 小腸末端の回腸まで |
| 消化率の単位 | たんぱく質全体に一つの値 | 必須アミノ酸ごとに別の値 |
| 大腸細菌の影響 | 受ける | 回腸で評価するため避けやすい |
| 100を超える値 | 通常は100で打ち切る | 単一食品の補完能力を見る場合は保持する |
| データの蓄積 | 比較的多い | 食品・調理条件によって不足している |
| 主な意味 | アミノ酸構成を総たんぱく質消化率で補正した充足度 | 消化された必須アミノ酸ごとの必要量に対する充足度 |
仮の数字で、計算方法を比べる
ここでは、計算の構造を示すために仮想の食品たんぱく質を使います。実在する食品の評価値ではありません。
3歳以上の子ども、青年、成人に使うFAOの基準パターンでは、リシンはたんぱく質1g当たり48mgです。仮想食品のたんぱく質1gにリシンが45mg含まれ、リシンの回腸消化率を80%、たんぱく質全体の真の糞便消化率を90%と仮定します。
PDCAASの場合
- リシンのアミノ酸スコア:45 ÷ 48 × 100 = 93.75
- 糞便消化率で補正:93.75 × 0.90 = 84.375
- ほかの必須アミノ酸の値がこれより高ければ、PDCAASは約84となる
DIAASの場合
- 消化されたリシン量:45 × 0.80 = 36mg/gたんぱく質
- 基準との比率:36 ÷ 48 × 100 = 75
- ほかの必須アミノ酸の比率が75より高ければ、DIAASは75となる
二つの値が異なるのは、一方が「たんぱく質全体の糞便消化率」、もう一方が「リシンそのものの回腸消化率」を使っているからです。DIAASが75という結果は、たんぱく質全体の75%しか吸収されないという意味ではありません。
食品別スコアを固定ランキングにできない理由
「卵は何点、大豆は何点、米は何点」と一つの表へ並べると分かりやすく見えます。しかし、研究で示された数値を比較するには、少なくとも次の条件を揃える必要があります。
- 全食品、濃縮物、分離たんぱく質のどれを測ったか
- 生、加熱済み、発酵、乾燥、精製など、どの加工状態か
- 乳幼児、幼児、3歳以上のどの基準パターンを使ったか
- 人、ブタ、ラット、試験管内法のどれで消化率を測ったか
- 真の回腸消化率、標準化回腸消化率など、どの補正法を使ったか
- たんぱく質量とアミノ酸量をどの方法で分析したか
同じ「大豆」でも、ゆで大豆、豆腐、納豆、大豆粉、分離大豆たんぱく質は食品構造も加工も異なります。ある研究の分離たんぱく質の値を、家庭で食べる豆腐へそのまま当てはめることはできません。
加熱や発酵も、一律にスコアを上げる魔法ではありません。消化しやすくなる場合がある一方、加熱条件によって特定のアミノ酸の利用性が下がることもあります。「発酵食品だからDIAASが高い」と判断するには、対象食品と加工条件を揃えた測定が必要です。
米と大豆のスコアは、足して平均すればよいのか
混合食を評価するとき、食品ごとのDIAASを単純に足したり、平均したりすることはできません。米のDIAASを60、大豆を90と仮定して、二つを食べたから75とする計算は誤りです。
正しくは、食事中の各食品が供給するたんぱく質量を求め、それぞれについて消化された必須アミノ酸量を計算し、同じアミノ酸ごとに合計します。合計値を、食事全体のたんぱく質量と基準パターンに照らして評価します。
穀類ではリシンが、豆類では含硫アミノ酸が第一制限アミノ酸になりやすいため、組み合わせによって補完が起こることはあります。しかし、補完の程度は、米と大豆を何g食べたか、それぞれが何gのたんぱく質を供給したか、どの消化率データを使うかで変わります。
日本食品標準成分表から、食品中のたんぱく質量やアミノ酸組成を調べることはできます。しかし、DIAASに必要なアミノ酸別の回腸消化率は、通常の成分表には載っていません。データがなければ、厳密なDIAASは計算できません。「不明な値を推定して埋めた計算」と「測定値に基づく計算」は区別する必要があります。
PDCAAS・DIAASで分かること、分からないこと
| 分かること | 分からないこと |
|---|---|
| 必須アミノ酸のうち、どれが最も制限になりやすいか | その食品を一日に何g食べるか |
| 基準パターンに対する、消化性を考慮した相対的な充足度 | 食べた人の筋肉が何g増えるか |
| ほかのたんぱく質源を補完できる可能性 | 食後の代謝や長期的な病気の発症リスク |
| 食品原料や食事設計を比較する手がかり | 脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラル、食塩など食品全体の価値 |
| 特定条件で測った食品たんぱく質の質 | 個人の消化機能、病気、薬、食物アレルギーへの適合性 |
DIAASが高い食品でも、食塩や飽和脂肪酸が多い場合があります。DIAASが低めの食品でも、食物繊維、ビタミン、ミネラルを含み、別の食品と組み合わせて必要量を満たせることがあります。たんぱく質の質は、食品全体の健康評価ではありません。
誰にとって「質」が重要なのか
たんぱく質の摂取量が十分で、複数の食品を食べている健康な成人では、一つの食品のスコアだけを追いかける意味は限られます。一日を通した総量と、魚、肉、卵、乳製品、豆、穀類、ナッツなどの多様性が重要です。
一方、食事量そのものが少ない場合、限られた食品へ依存する場合、成長期の子ども、必要量が増える時期、医療・栄養支援用食品を設計する場合には、少ないたんぱく質量で必須アミノ酸の必要量を満たせるかが重要になります。
FAOやIAEAがDIAASのデータ整備を進めている背景には、植物性食品へ大きく依存する地域や、幼児期の成長、食料支援など、量だけでは評価しにくい課題があります。高得点の食品を競うためではなく、限られた食料から必要なアミノ酸を確保できるかを判断するための指標です。
日常の食事では、どう読めばよいのか
- スコアを吸収率へ読み替えない:DIAAS 80は、たんぱく質全体の80%が吸収されるという意味ではない
- 量を先に確認する:高いスコアでも、食品から摂るたんぱく質量が少なければ、必須アミノ酸の総量も少ない
- 一つの食品で完結させない:穀類、豆、魚、肉、卵、乳製品などを、食習慣に合わせて組み合わせる
- 食品全体を見る:たんぱく質以外の栄養素、加工度、食塩、脂質、食物繊維も合わせて判断する
- 研究条件を確認する:食品名だけでなく、加工状態、対象年齢、測定法、基準パターンを見る
- 分からない値を断定しない:回腸消化率のデータがなければ、DIAASは確定できない
よくある質問
DIAASが100なら、たんぱく質を100%吸収できますか?
意味が異なります。DIAAS 100は、第一制限アミノ酸について、消化された量が基準パターンを満たしたことを示します。たんぱく質全体の吸収率が100%という意味ではありません。
DIAASが120になるのは、120%吸収されるからですか?
いいえ。基準パターンに対し、最も低い必須アミノ酸でも120%に相当する量が供給されるという意味です。100を超える部分は、別の食品で不足するアミノ酸を補完できる可能性を示します。
PDCAASよりDIAASの方が、必ず低くなりますか?
必ずしもそうではありません。評価部位、アミノ酸別消化率、100での切り捨て、基準パターンが異なるため、食品によって差の方向と大きさは変わります。異なる研究の数字だけを並べて比較することもできません。
自分でDIAASを計算できますか?
計算式そのものは複雑ではありません。しかし、食品たんぱく質1g当たりの必須アミノ酸量に加え、必須アミノ酸ごとの回腸消化率が必要です。後者のデータはまだ限られており、家庭で測定することもできません。既存の測定データが同じ食品・加工条件に対応している場合に限り、計算できます。
発酵させれば、たんぱく質の質は上がりますか?
発酵によって食品構造や阻害成分が変化し、消化性が変わる可能性はあります。しかし、すべての発酵食品で、すべての必須アミノ酸の回腸消化率が上がるとは限りません。加工前後を同じ方法で測ったデータがなければ、DIAASが改善したとは断定できません。
まとめ
PDCAASとDIAASは、たんぱく質の「吸収力」を一つの数字で表す指標ではありません。食品たんぱく質1gが、消化性を考慮した必須アミノ酸を、人の必要量に対してどれほど供給できるかを評価します。
PDCAASは、第一制限アミノ酸のスコアを、たんぱく質全体の糞便消化率で補正します。DIAASは、小腸末端までに消化された必須アミノ酸を一種類ずつ比較します。DIAASの方が生理学的には精密ですが、測定が難しく、食品データはまだ整備の途中です。
一つの食品の高低だけでは、食事全体の良し悪しは決まりません。必要なたんぱく質量、食品の組み合わせ、ほかの栄養素、年齢と健康状態を合わせて考えること。スコアは食事を裁く点数ではなく、必須アミノ酸の不足を見つけ、補うための道具なのです。
参考文献・資料
- FAO/WHO. Protein Quality Evaluation: Report of the Joint FAO/WHO Expert Consultation. FAO Food and Nutrition Paper 51. 1991.
- FAO. Dietary protein quality evaluation in human nutrition: Report of an FAO Expert Consultation. FAO Food and Nutrition Paper 92. 2013.
- FAO. Research approaches and methods for evaluating the protein quality of human foods. 2014.
- FAO/IAEA. Development of a protein quality database and the way forward for reviewing protein requirements and protein quality assessment. 2024.
- International Atomic Energy Agency. Bioavailability of Proteins from Plant Based Diets.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)各論:たんぱく質」
※本記事は、たんぱく質品質評価法の一般的な解説です。個人の必要量や病気の治療食を決めるものではありません。腎臓病、肝臓病、低栄養などで食事管理を行う場合は、医師または管理栄養士へ相談してください。
関連記事
三大栄養素とは?|人はなぜ、たんぱく質・脂質・炭水化物を必要とするのか

